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横浜地方裁判所 昭和40年(わ)364号 判決

裁判所書記官

永井道雄

本籍

徳島市川内町鶴島二六〇番地

住居

神奈川県藤沢市辻堂元町四丁目一〇番地一四号

不動産業

独歩こと

鈴木重信

大正二年一〇月八日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官松崎康夫出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役一年六月および判示第一の罰につき罪金五〇〇万円、判示第二の罪につき罰金一、五〇〇万円に処する。

右各罰金を完納することができないときは金五万円を一日に換算した期間、被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から三年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は不動産業を営む者であるが、所得税を免れようと企て、昭和三六年ころから東京都日野市、同八王子市方面において、地主より山林、農地等を買受けてこれを木崎物産株式会社、鳩和建設工業株式会社等に売却して利益を得ていたにも拘らず右地主に対する土地代金の支払者を右会社等の名義にし、かつ、その金額を過少に記載した支払調書、同明細書等を地主側に交付し或いは右会社等に税務署に対し地主から直接該土地を右の価額で買受けた旨申告するよう依頼するなどの不正行為により右取引ならびにこれによる所得を秘匿したうえ、

第一、昭和三六年分の真実の総所得金額が、別表一修正貸借対照表(昭和三六年一二月三一日現在の分)および別表二同年分脱税額計算書記載のとおり三五、八九一、一五二円で、これに対する所得税額は右脱税額計算書記載のとおり一九、二八一、六七〇円であったのにもかかわらず、昭和三七年三月一五日、当時の被告人の住居を管轄する東京都武蔵野市吉祥寺本町三丁目二七番地所在の武蔵野税務署において、同税務署長に対し、その総所得金額が五五二、〇〇〇円であって、これに対する所得税額が二一、〇〇〇円である旨過少に記載した虚偽の確定申告書を提出し、もって不正な行為により前記正規の所得税額と右申告税額との差額一九、二六〇、六七〇円を逋脱し

第二、昭和三七年分の真実の総所得金額が、別表三修正貸借対照表(昭和三七年一二月三一日現在の分)および別表四同年分脱税額計算書記載のとおり、八二、一七六、六八九円で、これに対する所得税額は右脱税額計算書記載のとおり五二、三六三、三五〇円であったのにもかかわらず、昭和三八年三月一五日神奈川県藤沢市朝日町一丁目一一番地所在の所轄藤沢税務署において同税務署長に対し、その総所得金額が一、七九九、五〇〇円であって、これに対する所得税額が三三八、一七〇円である旨過少に記載した虚偽の確定申告書を提出し、もって不正な行為により前記正規の右所得税額と右申告税額との差額五二、〇二五、一八〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目) (書証中括弧内記載数字は検察官請求証拠目録記載の証拠番号である。)

第一判示事実全般について

1. 第一、六、七、一二、一八ないし二一、二三ないし二五回公判調書中の被告人の供述部分および同人の当公判廷における供述

2. 被告人の検察官に対する各供述調書(昭和四〇年三月一日付分を除き計一二通、五四四ないし五四九および五五一ないし五五六)

3. 証人常盤方子(第七回公判)、同柏木康時(第七、八回)、同大田正五郎(第九回公判)、同渡辺勇(第一一、一二公判)、同鈴木喜一郎(第一三回公判)、同丸山典男(第一四回公判)、同豊島恒(同)、同浅野巖(同)、同村木正彦(第一五回公判)、同中本弘(同)、同伊藤晴江(第一七回公判)、同羽島信男(同)の各当該公判調書中の供述部分

4. 柏木康時(三四九)、渡辺勇(二通)(三七五、三七六)、伊藤晴江(三四六)、森山松蔵(三四七)、木崎茂男(三五〇)、高山藤江(二通)(三五一、三五二)、豊島恒(二通)(三五三、三五四)、高橋達郎(三五五)、丸山岳男(三五六)、鈴木喜一郎(三五七)、長沢和一郎(三五八)、辻武雄(二通)(三六一、三六八)、大竹光男(三六二)、中本弘(二通)(三六三、三六四)、小林功(三六五)、塩入満義(三六七)、堤雅保(三六九)、新島惣太郎(二通)(三七一、三七二)、村木正彦(二通)(三七三、三七四)、和田寛保(三七八)の検察官に対する各供述調書

5. 木崎茂男(一三通)(三九〇ないし四〇二)、豊島恒(二通)(四一三、四一四)、鈴木喜一郎(四一八)、新島惣太郎(四一九)、椎名俊夫(四二〇)、隈田欣真(四二二)、稲垣伝一(四二三)、江口寿三枝(三四一)、新村文武(二通)(三四二、三四三)、丸山典男(二通)(四五〇、四五一)作成の各上申書

6. 木崎茂男(二通)(四〇三、四〇四)、高橋達郎(二通)(四〇五、四〇六)、中沢俊雄(四〇七)、豊島恒(五通)(四〇八―四一二)、広畑南治(三通)(四三三―四三五)、森山松蔵(三四四)、大竹光男(二通)(四三七、四三八)、羽島信男(四三九)、杉浦仙之助(四四〇)、宇田俊明(五〇六)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

7. 伊藤千寿(一四)、小川房治(一七)、小林静子(二〇)、土方由嗣(二八)、土方福茂(三〇)、土方新九郎(三三)、守屋順蔵(三八)、守屋憲義(五五)、平忠志(五八)、平吉蔵(六三)、平儀平(六七)、高橋光治(六八)、山崎尚(七二)、秋間福茂(七四)、秋間邦敏ほか二名(八九)、秋間邦敏(九〇)、原川定吉(一〇九)、根本喜公(一二一)、阿川猛夫(一二四)、阿川和助(一二五)、朝倉巖(一二六)、朝倉誠二(一二八)、安藤一幸(一三〇)、有山真一(一三一)、梅田与作(一三八)、内山久九郎(一四〇)、遠藤忠次(一四三)、大貫八五郎(一四六)、落合貞一(一四八)、小川達治(一五一)、草下虎之助(一五五)、小峰由郎(一五六)、小林勝太郎(一五八)、小林ムラ(一六〇)、下田昌人(一六二)、清水藤三郎(一六六)、清水清作(一七一)、鈴木政(一七二)、杉山次郎(一七四)、須崎忠治(一七五)、須崎仙次郎(一七六)、阿川才一(一八〇)、大野武男(一八五)、小昏治雄(一八六)、小川市雄(一八七)、鈴木正一(一九六)、鈴木金重(一九八)、佐藤努(二〇二)、山本正雄(二〇五)、由良和雄(二〇七)、渡辺新助(二〇九)、渡辺渡(二一〇)、秋山福太郎(二一一)、飯島貞夫(二一三)、伊藤幸嗣(二一四)、伊藤義嗣(二一五)、石井清(二一七)、井上誠太郎(二一八)、浦野保造(二一九)、内田龍次(二二〇)、内田直市(二二一)、内田龍雄(二二二)、内田鉄蔵(二二三)、内田六助(二二五)、串田美貞(二通)(二二九、二三〇)、小山弘(二三五)、島田真策(二三七)、設楽フミ(二三九)、鈴木松雄(二四〇)、谷合正太郎(二四一)、原高治(二四四)、望月三男(二五〇)、山崎要一(二五二)、山下徳太郎(二五五)、渡辺行雄(二五六)、内田昌一(二五七)、吉川吉愛(二五九)、滝瀬林之助(二六五)、平九一(二六六)、平喜助(二六七)、平隆一(二六八)、平伝一(二七〇)、寺島静(二七三)、寺沢貞一(二七四)、中田権右エ門(二七五)、寺沢利右エ門(二七七)、中島清二(二八〇)、根津ワカエ(二八一)、根津利徳(二八三)、根津一郎(二八四)、浜田貞吉(二八五)、籏野謹之助(二八六)、林重徳(二八七)、林浅吉(二八八)、馬場文一(二九〇)、馬場清作(二九一)、馬場忠雄(二九二)、馬場弘明(二九三)、平野国利(二九四)、土方喜一(二九七)、細田源一(三〇三)、細田卯兵衛(三〇四)、細田巳之助(三〇五)、増島昌一(三〇六)、守屋信蔵(三一〇)、守屋良雄ほか一名(三一一)、高橋敬一(三一三)、林佐平(三二一)、土方正(三二二)、土方重雄(三二三)、守屋孝徳(三二七)、常盤庄五郎(三三五)、鈴木栄治(三三七)、小林種一(三三九)、作成の各上申書

8. 伊藤千寿(一五)、小川仲一(一六)、小川房治(一八)、小川トミ(一九)、小林正夫(二一)、小林与一(二二)、須崎良生(二通)(二三、二四)、滝瀬一雄(二通)(二五、二六)、西村マサ(二七)、土方由嗣(二九)、土方福茂(三一)、土方俊太郎(三四)、松井重(三五)、守屋実蔵(二通)(三六、三七)、守屋政子(三九)、守屋徳三郎(四〇)、守屋重蔵(四一)、川久保清作(四二)、須崎晃(二通)(四四、四五)、須崎太郎(四六)、須崎タカ(四七)、平美治(四八)、高橋通夫(四九)、常盤吉三(五〇)、森久保力(三通)(五一、五二、五三)、守屋憲義(五六)、大野武雄(五七)、平忠志(二通)(五九、六〇)、平太三郎(六二)、平吉蔵(六四)、平儀平(六五)、高橋光治(六九)、山口高靖(七一)、山崎尚(七三)、秋間ふさ子(七五)、大沢和巳(七七)、小野塚高之助(七八)、杉山堅一(七九)、鈴木喜四郎(八〇)、鈴木一雄(八一)、田中喜一(八二)、中村忠良(八三)、馬場忠雄(八四)、馬場弘明(八五)、秋間邦敏(九一)、石川芳正(九二)、石山寅太郎(九三)、金子勇(九四)、木下亀吉(九五)、設楽秀雄(九六)、清水顕之(九八)、鈴木栄治(九九)、鈴木正二(三通)(一〇〇、一〇一、一〇二)、谷合忠男(二通)(一〇三、一〇四)、塚本友七(一〇五)、津田薫(一〇六)、中島義雄(一〇七)、中島重雄(一〇八)、原川欣也(一一〇)、福島保太郎(二通)(一一一、一一二)、横溝広吉(一一三)、渡辺義平(二通)(一一四、一一五)、小林百蔵(一一七)、峰尾助太郎(一一八)、峰尾喜一(一一九)、森友次(一二〇)、根本喜公(一二三)の検察官に対する各供述調書

9. 土方新九郎(三二)、須崎晃ほか二名(四三)、平太三郎(六一)、平儀平(六六)、山口平太夫(七〇)、大沢和巳(七六)、根本喜公(一二二)、朝倉誠二(一二七)、秋間善兵エ(一二九)、有竹良作(一三二)、伊藤晴江(一三三)、伊藤松男(一三四)、岩沢哲夫(一三五)、井上国市(一三六)、梅田与作(一三七)、内山久九郎(一三九)、臼田岩太郎(一四一)、遠藤忠次(一四二)、大沢竹次郎(一四四)、大貫純一(一四五)、小昏常一(一四七)、小川泰顕(一四九)、小川光久(一五〇)、粕谷力造(一五二)、川辺三蔵(一五三)、小宮稔(一五七)、小林卯十郎(一五九)、下田昌久(一六一)、清水政一(一六三)、清水義輝(二通)(一六四、一六五)、清水兵四郎(一六七)、清水博(一六八)、清水元治(一六九)、清水遜(一七〇)、鈴木金重(一七三)、須崎太郎(一七七)、阿川喜知郎(一七八)、阿川佳一(一七九)、阿川花子ほか一名(一八一)、阿川鉄作(一八二)、大沢忠次(一八三)、大野武男(一八四)、小川市雄(一八八)、川辺仁四太郎(一八九)、小宮国三郎ほか一名(一九〇)、小場石喜太郎(一九一)、佐々木金郎(一九二)、下田照子(一九三)、清水林蔵(一九四)、鈴木与吉(一九五)、鈴木兼吉(一九七)、杉山閑男(一九九)、須崎喜一(二〇〇)、須崎竹一(二〇一)、守屋茂左エ門(二〇三)、守屋和一(二〇四)、谷野直志(二〇六)、吉原林蔵(二〇八)、青木織蔵(二一二)、石井清(二一六)、内田六助(二二四)、大野富雄(二二六)、大野長太郎(二二七)、川井元一(二二八)、後藤定義(二三一)、後藤茂一(二三二)、後藤春吉(二三三)、小坂三郎(二三四)、島崎喜助(二三六)、島村栄吉(二三八)、谷合良一(二四一)、長畑光次郎(二四三)、浜中貞男(二四五)、橋本国太郎(二四六)、橋本清一郎(二四七)、前田房吉(二四八)、松村デン(二四九)、望月一実(二五一)、山崎八郎(二五三)、山崎啓三(二五四)、木村太郎(二五八)、田上トシ(二六三)、滝瀬利雄(二六四)、平瀬良(二六九)、平歳二(二七一)、平源太郎(二七二)、中孝太郎(二七六)、豊泉政平(二七八)、速水弘裕(二七九)、根津忠寿(二八二)、馬場太七(二八九)、広畑南治(二九五)、土方久三(二九六)、土方美雄(二九八)、土方利一(二九九)、土方高次(三〇〇)、土方彌一郎(三〇一)、土方猪兵エ(三〇二)、森久保伊三郎(三〇八)、森山松蔵(三〇九)、高橋レン(三一二)、高橋敬一(三一四)、田中実(三一五)、平和雄(三一六)、平辰雄(三一七)、根津正義(三一八)、馬場辰之助(三一九)、馬場淳吾(三二〇)、土方二郎(三二四)、細田兼一(三二五)、飯室栄一(三三〇)、石川満好(三三一)、浦野久義(三三二)、設楽貞吉(三三四)、小野忠衛(三三八)、中村勝雄(三四〇)各作成の土地売却等についての回答書

10. 清水頴之(九七)、小林百蔵(一一六)、田村鉄次(二六〇)、土方豊(二六一)、伊藤晴江(二六二)、森友次(四四四)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

11. 若杉菊平作成の昭和三九年八月三一日付「渡辺勇の預金関係書類」と題する書面(三七七)

12. 山市仲治(三八六)、金森三郎(三八七)、大山綱明(二通)(三八八、三八九)各作成の証明書

13. 若杉菊平作成の昭和三九年九月五日付(二通)および同月七日付(二通)各調査書(四七六ないし四七九)

14. 高徳利雄作成の調査書(四八〇)

15. 伊藤晴江作成の上申書四通(四八一ないし四八四)および証明書二〇通(四八五ないし四八九および四九一ないし五〇五)

16. 志田要(四九〇)、伊佐岡宣之(五三四)各作成の上申書

17. 織田勇作成の「貯金元帳写及び残高証明書の提出について」と題する書面(五〇七)

18. 安室信一(二通)(五〇八、五〇九)、伊藤隆男(二七通)(五一〇ないし五二六)、吉村栄三(三通)(五二七ないし五二九)、清水正一(三通)(五三〇ないし五三二)、伊佐岡宣之(四通)(五三三、五三五ないし五三七)、小川孝雄(二通)(五三八、五三九)、畠山敏雄(二通)(五四〇、五四一)、落合輝久(二通)(五四二、五四三)各作成の証明書

19. 領置してある次の各物件

(1)  領収証 四〇枚(昭和四六年押第一〇号の一ないし四、一二、二一、二三、二四、二八ないし三一、三三、三四、四二ないし六六、九一)

(2)  売買契約書 一八通(同号の五、六、九ないし一一、一四ないし一八、二二、二六、三二、二一五、二一六、二二〇(二通)二四八)

(3)  メモ 七枚(同号の一三、二五、六八、八八、八九、九〇、九四)

(4)  賃貸借契約書 一枚(同号の七)

(5)  誓約書 一通(同号の一九)

(6)  支払明細書 三枚(同号の三六ないし三八)

(7)  売買契約書綴 一七綴(同号の三九、六九、七一、七二、七六、八六、一一九ないし一二八、一三七)

(8)  支払明細書綴 四綴(同号の四〇、四一、一三二、一三四)

(9)  賃貸借契約書綴 一綴(同号の六七)

(10)  支払計画書綴 一綴(同号の七〇)

(11)  土地台帳 一冊(同号の七七)

(12)  買収地未払表綴 一綴(同号の七八)

(13)  程久保支払原簿 一綴(同号の七九)

(14)  買収地積明細書綴 四綴(同号の八〇、八一、八三、八四)

(15)  買収報告書綴 一綴(同号の八二)

(16)  支払済一覧表綴 一綴(同号の八五)

(17)  買収明細書綴 一綴(同号の八七)

(18)  買収支払明細表綴 一綴(同号の九五)

(19)  支払調書綴 一五綴(同号の九七ないし一〇四、一四一ないし一四七)

(20)  元帳 二綴(同号の一〇五、一一〇)

(21)  金銭出納帳 二綴(同号の一〇六、一一二)

(22)  当座預金帳 一綴(同号の一〇七)

(23)  売上仕入帳 一綴(同号の一〇八)

(24)  賃貸内訳帳 一綴(同号の一一九)

(25)  明細帳 一綴(同号の一一一)

(26)  当座預金元帳 一綴(同号の一一三)

(27)  負債関係明細帳 一綴(同号の一一四)

(28)  売上元帳 一綴(同号の一一五)

(29)  仕入元帳 一綴(同号の一一六)

(30)  経費内訳帳 一綴(同号の一一七)

(31)  総勘定元帳 一綴(同号の一一八)

(32)  支払手形決済表 九枚(同号の一二九ないし一三一)

(33)  土地関係一般綴 一綴(同号の一三三)

(34)  封書 一通(同号の一三五)

(35)  山林及農地売買明細書 三枚(同号の一三六)

(36)  証明原簿 一通(同号の一三八)

(37)  土地売却明細帳簿 二綴(同号の一三九、一四〇)

(38)  百草園分譲地と題するファイル 一冊(同号の二三七)

(39)  売渡承諾書 一通(同号の二一〇)

(40)  委任状 一通(同号の二一一)

(41)  契約書 一通(同号の二一二)

(42)  買収明細書 一通(同号の二一七)

(43)  程久保書類未完分明細書 一通(同号の二一八)

(44)  土地売買契約中除外物件の処置に関する件 二通(同号の二一九)

(45)  程久保農地代金残額一覧表 三枚(同号の二二一)

(46)  八王子買収済中対木崎未契約分 一綴(同号の二二二)

(47)  地積並第一回支払済及予定金額表 一綴(同号の二二三)

(48)  八王子山田町買収要処理一覧表 一綴(同号の二二四)

(49)  昭和三七年度七生農業協同組合を通じ三沢地区山林農地買収につき支払完了の申告 一綴(同号の二二五)

(50)  不動産等の譲渡の対価の支払調書合計表用紙 三枚(同号の二二六)

(51)  八王子未払明細表 一綴(同号の二二七)

(52)  平山鮫陵源地代支払明細表 一綴(同号の二三〇)

(53)  八王子市山田町八幡打越土地代支払明細表 一綴(同号の二三一)

(54)  土地代金処理簿 一綴(同号の二三二)

(55)  土地勘定百草園給付地 一綴(同号の二三三)

(56)  南多摩分譲用土地買収明細表 一綴(同号の二三四)

(57)  手紙 六通(同号の二三八ないし二四二、二四五)

(58)  約束手形 二枚(同号の二三四、二四四)

(59)  被告人の三七年分所得税確定申告書 一枚(同号の二四六)

(60)  被告人の三六年分所得税確定申告書 一枚(同号の二四七)

(61)  預り証 二枚(同号の九二、九三)

第二なお、別表一、三の修正貸借対照表の各勘定科目のうち、

一、貸付金について

20. 広畑南治の検察官に対する供述調書(三四五)

21. 森山寅夫(四五四)、渋沢徳太郎(四五五)、堤雅保(四五六)各作成の上申書

22. 領置してある「証」と題する書面(昭和四六年押第一〇号の八)

二、受取手形について、

23. メモ 一枚(同号の七三)

24. 手形預り証 一通(同号の九六)

三、預け金について、

25. 尾崎守男、松井正次共同作成の回答書(三三六)

四、土地建物について、

26. 石渡信紀の大蔵事務官に対する質問てん末書(四五七)

五、車両について、

27. 甘利善太郎(四五九)および佐久間和助(四六〇)各作成の上申書

領置してある甘利善太郎作成の領収証 一枚(同号の二七)

六、什器備品について

28. 領置してある金銭出納帳一冊(同号の七四)および領収書一綴(同号の七五)

七、店主勘定について、

29. 山口キミの検察官に対する供述調書(三七〇)

鈴木岸松の大蔵事務官に対する質問てん末書(四三六)

八、借入金について、

30. 内田龍雄作成の「証」と題する書面(弁護人提出)

九、未払金について、

31. 伊藤保彦の大蔵事務官に対する質問てん末書(四五二)

32. 小林貫治(四六二)、辻五郎(四六四)、寺田光逸(四六七)作成の各上申書

一〇、預り金について、

33. 石原俊男作成の昭和三八年八月一九日付上申書(四二八)

(弁護人の主張に対する判断)

一、被告人は、鳩和建設工業株式会社、木崎物産株式会社、大平住宅株式会社等の各会社ないしその関係者との間に、いわゆる団地造成を目的として大量の第三者所有の土地の売買契約を締結し、これに基づき、昭和三六年ころから東京都日野市、八王子市等で自ら大口の土地買収を始め、土地被買収者(地主)との間に売買契約が成立すると、前記各社との契約に基づき、これを順次中間省略登記によって地主から直接前記各社もしくはその譲受人に所有権移転登記をなしていたものであるが、右取引について被告人は団地造成のため一個の契約により農地、山林、雑種地からなる一定地域の土地を一括売買している場合、右一定地域内の土地はこれを包括して一個の物件として売渡すという取引形態であるから、その土地の一部について引渡し、所有権移転登記がなされていても買主はこれによって取引の目的を達し得ないのであるから、この種取引においては一部履行の観念をいれる余地はなく、一部でも不履行の場合すなわち地主から部分的に取得出来ない未買収地が虫食い的に残ってしまったような場合は全部不履行と解すべきであるから、右地域内の土地を一筆残らず全部取得してこれを買主に引渡しを完了した時をもって売上計上の時期とすべきである。またこのように解しなければ買主との契約によって売値は一定しているのに各地主から買値はまちまちで売値より高い場合もあり、かつ、買付けに長期間を要するところから個々一筆一筆の土地についての損益算出は不可能である旨主張する。

しかしながら、本件関係土地の売買について、被告人とその買主等との間においては右一定地域内の土地を一括して売買したいという意思は合致しているものの、現実に予定された数百筆数万坪にもわたる土地をそのすべてにわたって買収することは最終的には土地収用法の発動さえ認められる公共事業における用地取得の場合ならいざ知らず、本件の如き公権力の発動の余地のない取引の場合、それが本来至難否不可能な事柄に属することは経験則上明白である。したがって、この場合、売買の対象となった買収して売渡すべき土地の範囲は、いわば当事者間における単なる努力目標と解すべきであって、現実には、そのうち相当量の土地を買収出来れば、売買の目的は達成されたというべく、所論のように一部でも不履行ならばすなわち全部不履行に等しいものと解する余地はない。さればこそ、被告人と買主との間に団地造成を予定する一定地域について包括的な売買契約書が作成された事実はなく、例えば木崎物産(株)と被告人との間の売買契約書(検察官請求証拠目録三九〇、木崎茂男作成上申書添付)によれば、それらは、八王子市山田町、散田町地区の土地につき一ブロック毎に、しかも山林、田畑毎に期日を異にして作成されており(前同目録四一九参照)また登記についても、各土地毎に買収出来次第順次中間省略の方法により、山林等については所有権移転登記を、農地については農地法所定の許可を条件とする所有権移転仮登記が地主から買受人若しくはその譲渡人になされており、またこのことは、同市南平地区の土地についての被告人と鳩和建設工業(株)との取引の場合も同様であって(前同目録四一九新島惣太郎作成の上申書添付の契約書参照)、弁護人主張の如く、一括して引渡しをしなければならないとするならば、すべて買収が完全に終了し契約が完全に履行しうる時点において所有権移転登記をすれば足り、契約解除になるおそれのあるのに事前に登記をすること自体取引界の常識に反するものというべきである。

そして現に本件関係土地の売買に関与した証人豊島恒(木崎物産(株)関係)、同浅野巖(日興不動産(株)関係)、同渡辺勇、同鈴木喜一郎(大平住宅(株)関係)らの各証言によれば本件各土地については一部買収不能のものがあったにも拘らず、契約解除が問題になったことは全くなく、かりに所期の目的が達成出来ないにしても他に転売が可能であるところから面積の伸縮はかなり自由であったことが認められるのである。

とくに、木崎物産(株)は契約時に売買代金を全額被告人に支払っているのであるが、売買の対象となった土地全部を被告人が買収出来なかったにもかかわらず、契約は解除されていないし、同社と被告人は、昭和四三年九月買収不能分については代替地の提供と前渡しされた売買代金の利息の支払により清算していることが認められる(昭和四六年押第一〇号の二三八ないし二四五参照)。

また、前掲証人渡辺勇は被告人から買受けてこれを大平住宅(株)に売渡す約束の日野市三沢地区の土地について当初予定された一〇万坪のうち、四万坪しか入手出来なかったが、右会社に対しては同証人の責任でうまく逃げ、しかも、本来同社に売るべき土地の一部を自己の知合いに売っている始末であり、取引予定地域内で当然売渋る地主があるということは、お互いに予測したうえでの売買契約であった旨証言し本件土地取引の形態、性格必ずしも所論の如きものでなかったことを裏付けているのである。

弁護人の主張にしたがえば本件土地の取引につき、関係地域に虫食い的な一部買収未済が残存する限り永久に売上計上すべき時期は到来しないことになり、失当であるばかりでなく、現実に売買代金の授受があり、とくに木崎物産(株)との取引に関してはさらに手数料すら受領しているのであるから(前同目録三五三、三九一参照)、所論は租税負担公平の見地からみても到底許容し得ないものというべきである。

二、次に弁護人は、本件の如き商品としての土地の取引における売上計上の時期は商品たる土地を買主に引渡した時と解すべきであると主張する。

よって、検討するに、被告人の本件土地売買の取引形態は、被告人自ら本件土地は商品であると主張しているところからも明らかなように不動産会社等の間に第三者所有不動産の売買契約を締結し、右契約に基づいて、自己の名において買収した土地を自ら使用することなく、またその土地を整地、造成等加工しないで現状のまま右不動産会社等に転売するいわば仲介に近い形式のもの(木崎物産(株)からは仲介料をも受取っていることは前述したとおり)である。そして本件の場合、物件の引渡しが、いつ行なわれたかは必ずしも明確ではなく、他方、土地の所有者(地主)と被告人、および被告人と不動産会社等の間にはそれぞれ売買契約が結ばれ、土地代金の授受がなされながらも、土地所有権移転登記は、前述のとおり中間省略により地主から直接不動産会社等もしくはその譲受人になされている。

ところで本件に適用される旧所得税法(昭和四〇年法律第三三号による改正前のもの)は、一暦年を単位としてその期間ごとに課税所得を計算し課税を行なうこととしている。そして同法一〇条が右期間中の総収入金額又は収入金額の計算について、「収入すべき金額」によると定め、「収入した金額による」としていないことから考えると、同法は現実の収入がなくても、その収入の原因たる権利が確定的に発生した場合には、その時点で所得の実現があったものとして、右権利発生の時期の属する年度の課税所得を計算するという建前(いわゆる権利確定主義)を採用しているものと解される。そしていわゆる事業所得にかかる売買代金の債権については、法律上これを行使することができるようになったときに右条項にいう「収入すべき金額」となるものと解するのが相当である。(昭和四九年三月八日最高裁第二小法廷判決民集二八巻二号一八六頁、昭和四〇年九月八日最高裁第二小法廷決定刑集一九巻六号六三〇頁参照)。しかして、不動産物権の移転は当事者の意思表示のみによって効力を生じ、登記はその物権変動の対抗要件にすぎないのであるから、右物権移転の時期は、特約その他特別の事情(例えば農地における知事の許可等)が存しない限り意思表示すなわち契約の効力発生の時である。したがって前述したような本件の如き取引形態すなわち第三者所有不動産の売買契約の場合には、その契約締結後、売主たる被告人が第三者たる地主から右不動産の所有権を取得すると同時にその所有権は当然に買主たる不動産会社等に移転するとみるべきである。

この場合、買主に不動産の所有権が移転することによって、売主の代金債権は確実となる筋合であるから、売主たる被告人が第三者たる地主からその不動産の所有権を取得した時すなわち右地主との売買契約の効力発生のときに、当該土地の売却代金が売主たる被告人の収入すべき、権利の確定した金額となると解するのが相当であり(昭和三九年一一月九日名古屋高裁判決高裁例集一七巻七号六八五頁参照)、右と同旨の見解に基づいて被告人の本件不動産売買に基づく所得を算定すべきものとした検察官の主張は正当であり、これに反する弁護人の所論は採りえない。

(法令の適用)

被告人の判示第一および第二の各所為は、いずれも昭和四〇年法律三三号附則三五条により同法による改正前の所得税法六九条一項に該当するから、所定刑中懲役刑と罰金刑とを併科することとし、なお情状により各罪の罰金刑については同法六九条二項を適用してそれぞれ五〇〇万円を超えその免れた所得税額に相当する金額以下で処断することとし、右各罪は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑については、同法四七条本文、一〇条により犯情の重い判示第二の罪の懲役刑に法定の加重をし、罰金刑については判示第一の罪につき昭和三七年法律四四号附則一五条により同法による改正前の所得税法七三条本文を適用しその刑期および各罰金額の範囲内で被告人を懲役一年六月および判示第一の罪につき罰金五〇〇万円に、判示第二の罪につき罰金一、五〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、刑法一八条一項により金五万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置し、諸般の情状を考慮し同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文によりこれを全部被告人に負担させることとする。

よって主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 市川郁雄 裁判官 廣瀬健二 裁判官手島徹は転補につき署名押印できない。裁判長裁判官 市川郁雄)

別表一 修正貸借対照表

過少申告脱税犯 昭和36年12月31日現在

〈省略〉

別表一(続き)

〈省略〉

別表二 昭和36年分脱税額計算書

〈省略〉

別表三 修正貸借対照表

昭和37年12月31日現在

〈省略〉

別表三(続)

〈省略〉

別表四 昭和37年分脱税額計算書

〈省略〉

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